宇宙開発では、なぜ「これは失敗ではない」というのか
宇宙開発では、うまくいかなかった場合でも「これは失敗ではない」という言葉がよく使われます。 一見すると負け惜しみにも聞こえてしまいますが、未知の領域に挑戦をし続けために「失敗の定義」が違うからなのです。 宇宙はほぼすべてが未知の領域です。地球上では予測できない現象─極端な温度変化や衝撃、放射線などの影響─が様々な形で次々と現れます。SpaceXのロケットも初期段階では爆発続きでしたが、それがなければ再利用ロケットの技術は生まれませんでした。そのため、最初から「偶発的な成功」を求めることよりも、少しずつ試しながら学ぶことが重要になります。 トライアンドエラーの過程で得られる「予想外の結果」─地上...
NASAがアルテミス計画を変更
ー非宇宙企業が宇宙ビジネスに参画するチャンスー アルテミス計画は、NASAが主導する月面探査プログラムです。アポロ以来の有人着陸を目指し、月を周回する「Gateway」という基地を構築し、継続的な月面活動や、火星探査の基盤を築きます。日本もJAXAを通じて参画しています。 項目 変更前(従来計画) 変更後(最新アップデート) Artemis IIIの目的 月面着陸(2027年予定)。SpaceX Starship HLSで宇宙飛行士を月面へ降下・活動。 地球低軌道で総合システム試験。商業月着陸船(HLS)とのランデブー・ドッキング、生命維持システム、通信、推進、xEVA宇宙服の統合検証。 月面...
2040年、月面で40人が暮らす
―JAXAが示した明確なロードマップ ●月面での40人共同生活 2025年11月にJAXAが公開した「日本の国際宇宙探査シナリオ案2025」によると、2040年代に月面で40人が常時滞在する具体的なプログラムが示されています。 具体的には以下の生活インフラが整備されます。 居住区 40人分の個人スペース+共有スペース 与圧ローバー 5台が年間2000km走行で物資・人員輸送 月離着陸機 4人のクルーが毎月往来・ローテーション 資源利用 50tの燃料を毎月製造 驚くべきは「40人共同生活」が前提である点。ISS(国際宇宙ステーション)の6人ローテーションとは異なり、長期定住型社会です。 ●1/6...
日本版「スターリンク」
米スペースXの「スターリンク」のような通信網を国産で構築することを目指し、総務省が2025年度補正予算に1500億円を計上しています。高度2000キロメートル以下の低軌道に複数の衛星を打ち上げて、各々が連携して機能を発揮する「衛星コンステレーション」を構成する予定です。 災害時に地上設備が使えなくなっても通信手段を確保できたり、山間部や離島など光回線の敷設が難しい場所で携帯電話が使えたり、「通信の空白」が解消できます。平時においても、農業や林業、地上・海上の交通、ドローン制御、など多岐に渡り活用の可能性が広がり、新たな産業創出・活性化が期待できます。 複雑化する安全保障環境を考えると、自国で衛...
スペースXのIPO
宇宙産業は儲かるのか 2025年12月10日付のブルームバーグのニュースサイトの記事「スペースXが来年IPOへ、300億ドルを大幅に上回る調達目指す」において、「スペースXは300億ドル(約4兆7100億円)を大きく上回る資金の調達を目指し、新規株式公開(IPO)計画を進めている。」と報じています。 日本では10年で1兆円のJAXA基金(宇宙戦略基金)ができたことで話題になりましたが、民間企業でその5倍近くの資金調達により宇宙に取り組むことは、宇宙が「科学・探査」の段階から、「ビジネス」の段階へ移行していることを示しています。 では、スペースXはどうやって売上・利益を上げているのでしょうか。詳...
JAXAと共同研究ができる枠組み
宇宙探査イノベーションハブ 民間企業と研究機関、JAXAや省庁も交えた産官学で国際宇宙探査に向けた共同研究を行う枠組みが、2014年に開始された「宇宙探査イノベーションハブ」です。企業が培ってきた地上での新産業創出に資する技術を利用し、研究機関やJAXAの知見や実験施設を活用して宇宙探査への利用拡大をしていくものです。企業は地上での新産業創出、JAXAは宇宙利用へと役割分担を行って2つの出口を創出する「Space Dual Utilization」として取り組むことで、Win-Winの関係を築きながら社会に貢献する枠組みとなっています。 従って、宇宙のノウハウがない、宇宙のことはわからない企業...
宇宙はイノベーションが起こる場所
ブリジストンによる月面探査車のタイヤ開発 米国NASA「アルテミス計画」では、月面探査車の開発を日本が担当しています。JAXAおよびトヨタ自動車株式会社、そしてタイヤ開発担当として株式会社ブリジストンが参画しています。月面では120℃~-170℃と寒暖差が激しく放射線にもさらされるため、ゴムや樹脂といった材料は使えません。また真空であるため、空気入りのチューブも使えません。そこでブリジストンは、金属のばね構造を活用し、表面はスチールウールで砂地でも滑らないタイヤを生み出しました。現在鳥取砂丘等、砂地での実証を重ねています。中に空気チューブが入ったゴム製のタイヤが当然のように使われてきましたが、...
トランプ政権とアルテミス計画
「アルテミス計画」は米国が中心となった有人宇宙旅行・月面着陸計画です。輸送機、有人宇宙船、着陸機、月周回有人拠点(Gateway)、商業月面輸送サービス等によって構成されており、将来の有人火星探査に向けた技術実証も行います。本計画に日本も参画しており、有人月面探査車(ルナクルーズ)の開発や、日本人2人が月面着陸することが決まっています。第2次トランプ政権になってNASAの予算が削減されたと共に、イーロン・マスク氏との関係悪化がどのように影響するかがわからず、計画通り進むかは不透明な状況です。その間も、日本では着実に開発を進めて、しっかりと成果を出してほしいと願います。