宇宙開発では、なぜ「これは失敗ではない」というのか
宇宙開発では、うまくいかなかった場合でも「これは失敗ではない」という言葉がよく使われます。
一見すると負け惜しみにも聞こえてしまいますが、未知の領域に挑戦をし続けために「失敗の定義」が違うからなのです。
宇宙はほぼすべてが未知の領域です。地球上では予測できない現象─極端な温度変化や衝撃、放射線などの影響─が様々な形で次々と現れます。SpaceXのロケットも初期段階では爆発続きでしたが、それがなければ再利用ロケットの技術は生まれませんでした。そのため、最初から「偶発的な成功」を求めることよりも、少しずつ試しながら学ぶことが重要になります。
トライアンドエラーの過程で得られる「予想外の結果」─地上では発生しない故障、想定外の反応、気づかなかった要因─は、次の一歩を大きく変える貴重な宝物です。JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」も、着陸時の計測不具合で一度中止をしています。その後のやり直しにより、貴重なサンプルの持ち帰りに成功しました。着陸中止による「学び」がミッションを成功に導いており、決して「失敗」とは呼ばないのです。
一度で仮説通りの結果を得ることは、必ずしも成功にはつながりません。もし本当に簡単にうまくいくなら、多くのプレイヤーが追従し、激しい競争状態になります。むしろ、失敗やアクシデントを踏まえて仮説を何度か書き換えることが、他者の参入を阻み、長期的な優位性を築きます。
宇宙開発では、「初めから成功続き」ということは皆無です。1度目にたまたま成功しても、2度目・3度目に必ず何らかの失敗が起こります。失敗したミッションから得たデータが、次の設計・運用ノウハウとなり、次のミッションの成功確率を大きく高めます。そのような積み重ねにより、未知の領域を一歩ずつ開拓していくのです。
ビジネスでも同じです。新規事業に取り組むものの、少し試して良い結果でなければ、すぐに止めてしまう。そんなことを何度繰り返しても、成功することは難しいでしょう。ブルーオーシャンで誰も取り組んでいない未知の領域であれば、市場の動向や技術の限界、顧客の本音などが事前に正確に読めるわけではありません。ユーザーの反応や消費行動の変化など、当初の仮説とのギャップや、その要因となる情報を地道に一つひとつ探して積み重ねることで、次の事業戦略を組み立て直すことができます。この事業戦略を再構築する道のりこそが、「失敗からの学び」により成功に近づけるプロセスなのです。
イーロン・マスクは「もし失敗していないのであれば、十分なイノベーションをしていないことになる」と言っています。イノベーションとはリスクを取って未知に挑戦することで得られるものであり、失敗は「終わる場所」ではなく「学ぶ機会」です。失敗をどう位置づけるか─諦めて止める判断基準とするのか、貪欲に情報収集をして学ぶ機会とするのか─その違いが、宇宙開発でも、中小企業の新規事業でも、成功にたどりつけるかどうかを大きく左右するポイントになります。
どのように挑戦すれば「失敗からの学び」ができるのでしょうか。
仮説をできるだけ具体的に立案し、情報収集と検証に労力をかければ良いのですが、そう簡単ではありません。特に熱意が大きければ大きいほど、客観的な視点で戦略立案とその再構築をすることが難しくなることも、少なくありません。
単独で立案・実行することが難しい場合は、外部の力を借りることも有効な手段となります。
【参考】
・タッチダウン1リハーサル1(TD1-R1)の結果について(はやぶさ2プロジェクト)
https://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20180912/